/*** */

精神分析的心理療法のTips(中級編) ・話のまとまりがなくなる/バラバラになるクライアントの面接

心理療法
中級
当初無料

精神分析的心理療法のTips(中級編)
・話のまとまりがなくなる/バラバラになるクライアントの面接

クライアントとまだ話したことがない学生さんだけでなく、有資格者の方でも「自由に話してもらい それについてコメントしていくタイプ」の心理療法をしたことがなく、バラバラな話をするクライアントの話をどうつかめばよいかわからないこともあるでしょう。

繰り返しになりますが、すでに何らかの心理療法の訓練を終えた方で、そう感じるとしたら、その人は「自由に話してもらうことで、クライアントの心のあり方や動きのあり方を知っていくダイナミックな心理療法」の方法をまだ教わってないのだと思います。もしそうであれば、早ければ数回、遅くとも1、2年でこのようなことを経験することになります。もし分かりやすい対話で終始するなら、その方法は教育や指導に近いものか、自由連想法がそのクライアントにあっていないかです。クライアントによっては、確かに4、5年後にたどり着ける人もまれにいます。ですが、その場合、途中の折々に「この方法があなたにとってとても効率が悪いものになっているのがなぜか?」「それでも続けたいとしたらクライアントand/orセラピストのどんな不安回避や欲がからんでいるのか?」自問したり、相手に投げかける必要があります。

思うに、かつては精神分析はこのことで失敗している気がします。セラピスト側の無自覚の否認された不安回避や欲求への願望は思ったより強く、頭で吟味していてもしきれるものではないことを、あまりに理想化された「正常な逆転移理論」で盲目にしやすくしてしまいました。現実離れしすぎた継続もよしとしてしまう合理化を生んだのです。これは大戦直後はともかく、平和の結果簡便な対処法が増え、回避の合理化も許容されるようになり、年々頻度の多い高額な面接のニーズは下がったのに、時流の結果、修得困難な専門的セラピーをできる(はず)の人が増えたため、ケースの確保し合いが密かに起きたためでもあると思います。

話を戻します。みなさんのレベルですと、いくらか想像か経験があると思いますが、最も難しいのは、単純に不安て・脆い人が破綻した時に連合弛緩をきたし、不安いっぱいで強烈に大慌てした破綻の前兆場面ではありません。

もし経験やコンディションに恵まれ、結果として統合失調症の人(ましてやそれまでそうだと知らなかった人)が面接の中で良い意味でこの状態を大きく展開できている可能性がある時がよい例です。その見極め判断はとても難しく、当面、面接はとても細い綱渡りになります。「大丈夫なのか? 破綻してしまうのか?」はっきり区別がつかない状況が起きている時、動くべきか、聞くべきか、手に汗を握った面接が続きます。

この段階を初級者が一人でやり通せる可能性はほぼなく、指導者でもやり通せた人の数は少ないので、極めて慎重に構える必要があるわけです。というのも、もしその状態が彼らの日常生活にこぼれ出したら、彼らのほうが自我境界が弱いので、セラピストも負担は負うものの、彼らの生活へのダメージのほうが大きいのです。

少し転移を扱えるレベルになっておられる(であろう)みなさんにとって、こうした危機状況で、何が(どこまでが)大丈夫であり、また大丈夫でないのか、身を持って学ばないといけない時期がきているかもしれませんね。それは誰にも代わってあげられるものではなく、それゆえ(経験するまでつかめない性質なので)うまくやれずに終わるケースもあることでしょう。

前もって何がどのように起きるのかわからないことは、その場にならないとわからないのです。だから、もし保証がないと無理だとお感じになったら、諦めの選択も重要です。指導や研究会の中で、立派なクオリファイは受けた人でさえ、実感と責任をもって「自ら面接の継続を諦める」経験を持っていない人が多いのには驚かされますが、正直そうしたほうが、プロとしてその世界に踏み込めたといえるかもしれません。

ビオンが「他の人には分からない経験」と述べていたのは、その先にあるものだと私は思います。

もう少しやさしい説明は>こちら<にありますので、ご参考になさってください。