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精神分析的心理療法のTips(初級編) ・メモのとり方について

精神分析的心理療法のTips(初級編)
・メモのとり方について

精神分析的なスタンスとしては、面接の記録として「理想をいえば」録音だけでなくメモもとらないのがよいのですが、なかなか難しいものです。

初心者のうちはなれてなくて大変ですし、ベテランになって会うクライアントが増えても大変です。

記録といえば、現代では録音や動画撮影という手もあります。ですが、面接者もクライアントもそれに気を取られたりすることもあるし、その後それを見て理解を深めようとしても、量も膨大な上、なぜか機械的な作業感が出てくると思います。

メモはどうでしょう? 悪くはないのですが、クライアントはそれが自分の何に反応して起きるのかすぐ適応してしまいます。一番良く見られるのは、彼らが待つ、というかタイミングを合わせてくれてしまうことです。しかも殆どの場合、悪気のない無自覚なので、それを止めると、今度はこちらからの制止的な影響を拭えません。

自由連想の対応の理想形は「リアルな人として関わるが、こちらの個人的心情で影響を与えない」というものです。ですが現実にはカンペキはないのも事実。無理に完璧を保とうとしたら表情を一切変えないようにしなければいけませんし、服もいつも同じにしなければいけません。でも、まったく表情を変えないのは無理です。顔の筋肉の一部は自律筋といって意志と関係なく、そして時に無自覚な状態で収縮します。極論すれば体温・呼吸・発汗まで制御するという、非現実な理想が待っています。

ということで、そういうスタンスは、面接方法やそれと並走する学問や学派文化に「なるべく」矛盾がないよう努める気持ちを実行していくのがよいと思っています。

そこでおすすめするのは、

  • スーパービジョンを受けている間は、特に初めのうちはメモをしない。
    →どうしても無理と感じたら、まずはその相談から始めるとよいでしょう。
  • 全部のケースで全面接の記録をきちんととろうとしない。
    →もしそれが可能な方がいたら、記録のプロだとは思いますが、通常無理がきます。
  • 一般の相談や一般診療ではもちろん大いにメモを取って良いと思います。
  • なれないうちは、主題だけメモをとるとか指折しながら話を追うとかはいかがでしょう?
  • あとは思い切ってどこかの時点で、全くメモをとらないで一度面接に臨んでみましょう。
    →はじめは貧相なメモしか作れなかったりします。また、思ったより多くなったり、順番がごっちゃになったり、書き終えても色々浮かんでくるかもしれません。後で書きますが、そうした色々な要因も含めて書くのは自己研鑽には役立つ時もありますが、SVなどで出すには限度もあります。多分、自分で時間を区切って取り組むのが最善でしょう。

私の知るちゃんとしたベテランの先生たちは、

  • ケースが増えたら、面接後に一部重要だと思ったやりとりを数行メモするだけにとどめる。
  • 一部のケースやセッションでは、論文や発表のためにA4用紙1,2枚くらいにおさまるように記録する(スーパービジョンを受ける時と同じくらいの分量)
  • クリストファー・ボラスという分析家は、フルレコードを試すことを勧めていました。自分の連想も含め1回のセッションを思い出せる限り書き尽くす方法です。試したことがありますが、彼の言う通り数時間かかりましたし、A4用紙10枚近くにおよびました。結構相談者のも自分のも連想や雰囲気、そして自分の内的思考の情報量バカにならないのです。そこから気づけるものもありますが、全部の回それをしていたら、それもやはり心理療法家というより連想記録のプロにしかなれない気がします。

なぜメモをとらないか?